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20080411 0034 昨日の夜の話。 |
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最初に言っとく。超長い。
本日、午前二時の事である。 いつもどおりPCに向かっていた私は、不審な物音に気がついた。 近くで何かがぶつかるような音が断続的に聞こえ、時折小さな声が聞こえた。 初めは気のせいかと思ったが、次第にはっきりと耳に入る人の声に私はPCをスタンバイ状態にした。 静まり返った自室で、やはりかなり近い距離で物音が確認できた。 短い言葉(のようなもの…よく聞き取れない)を幼い声(この時は、近所に子供が多かったからかそう思った)で繰り返す。 息も絶え絶えな様子に私は隣の中学生が野球の練習でも始めたのかと、カーテンを開けた。 そこに予想していた姿は無かった。誰もいないが、確かに声が聞こえる。 ベランダから外を見回すと(私の家はアパートの一階で、自転車置き場が一杯のため自室前に駐車している。)、丁度ベランダとバイクの間の隙間に人が半ば倒れたような状態で蹲っているではないか。 どうやら老婆らしかった。 その老婆は、しきりに何かを呟きながら、手を宙に泳がせていた。 はっきりとは聞き取れなかったが、私にはそれが「あとちょっと、あとちょっと」と言っているように聞こえた。 尋常ではない様子に声を掛けたが、何かに必死でこちらに気がついていないようだった。 「待っていてくださいね。今、そちらに行きますから。」 私は外に出ると、その老人に駆け寄った。 大丈夫か、怪我をしたのか、と問うと、老人は寒くて脚が動かないと答えた。 なんとか玄関先まで来てもらい、激しく震えている老人を家の中に入れた。 寝ている母を起こそうと思い、老人を待たせて母の部屋へ行った。 母に警察に連絡してもらうように口早に伝える。 動けない中を匍匐全身のようにして這って来たのであろう、腕のからは血が滲み、全身砂に塗れた老人はいつの間にか居間で倒れていた。 寒い、寒い、座るところはないか、と聞いてくる。近くに椅子があったが、這って移動することしか出来ない老人には到底座ることが困難に思えた。 私は戸惑いつつ、「座布団ですか?」と効くと、老人は椅子によじ登るようにして(危なっかしかったので私が支えつつ)椅子に座った。 この老人はろれつが回らず、息も激しい運動をした直後でもあるかのようにヒューヒューゼイゼイと苦しそうであった。 水を飲みますか、と言ってプラスチック製の赤いコップを差し出すと一口口に含み、コップに吐き戻した。 「捨ててください。」といわれ、流し場に行ったが正直面食らった。 吐き出された水が黄土色ににごり、まるで吐き戻したような状態であったからだ。近くで砂でも飲んできたのだろうと思ったが、もしかしたら気管支がわるいのかもしれないと思った。 水を捨てた後コップは丹念に洗ったが、やはり後で思い直し、捨てた。 居間に戻ると老人は、寒いから毛布をくれ、と言った。 私は「少し待っていてくださいね」と言い、すぐ傍の襖を開けた。私の部屋である。 毛布を物色しようとすると、老人は椅子から下り、部屋の中へ入ってきた。 よほど寒かったのであろう、「こっちのほうがあったかい、こっちのほうが」と言って駆け込むような素早さであった。 正直面食らった。 六畳ほどの部屋には私の布団と、その隣に親戚の家に泊まりに言っている妹の布団があった。 老人は妹の布団に手を伸ばしかけたが、泥だらけであったから、私はとりあえず自分の布団に座ってもらうよう促した。 毛布も近くに有った私が使っていたものをかけてもらった。 あまり寒そうだったから、部屋の隅にあった電気ストーブを移動させると、大分落ち着いたようだった。 老人の手は擦り剥いたような傷と、ぶつけてうっ血したのであろうか、痣も複数あった。 よく見ると袖口が赤く滲んでいたので、腕をまくってもらうと、案の定擦り傷は肘ほどまで続いていた。 ぬらしたタオルで拭こうとするが、老人はあまり手当てに関心がないようだった。 怪我など一行にかまわないといった様子で喋り捲る。 ヒューヒューと今にもむせ返りそうな呼吸の中で、支離滅裂でしかも舌足らずな調子で同じ話を繰りかえす。 息子が東京から帰ってきた話。 息子の職業の話。 何のことか解らなかったが、誰かが監視に来て金を取られるという話。 時々旦那(と思われる)の話。 そして、私の家に泊めて欲しい、という話。 それらが何度繰り返された頃だろうか、警察が家に来た。 老人は警官そっちのけで私に向かって同じ話を繰り返す。 泊めてくれないか、と。 警官二人と三人がかりで何とか玄関まで誘導し、パトカーにのってもらう。 最初その老人を見つけた時、おんぶする事が出来なかったが、今回もおぶさる事を拒否し、脚を引き摺って這って移動していた。 去り際まで、「よろしくおねがいします」と言っていた。泊めてくれ、という事だろうか。 そして、「明日も来ますのでよろしくお願いします」と言っていた。 私は去年、同じような時間帯に家に警察が来たのを思い出した。 その時はどうやら部屋番号を間違えて家を訪問したらしいのだが、その時警官は確かに「おばあちゃんを保護したって聞いたんですが。」と言っていた。 もしかすると同一人物かも知れない。 後で母の携帯に警察から電話が入った。 近所の人だったらしく、無事家に帰ったそうだ。 一人暮らしではないらしいが、時々抜け出してしまうそうだ。 しかし、「自転車で来た」とか支離滅裂な話をするあの老人の住所をよく突き止められたものだと思った。おそらく家族が捜索願いをだしたのだろう。 しかし、今日も昨日の予告どおりに老婆が家に現れたとしたら、私は家の中に彼女を入れる気にはどうしてもなれないのだ。 昨日、古びた毛布だったけれども、土ぼこりと臭いが気になって処分してしまった。 老婆が帰った後、家の中で腕を擦った時に点々と付いたのであろう血痕を拭った。 私の部屋の入り口および布団は、案の定砂塗れであった。 敷布団は予備が無く、どうしようもないので掃除をして今後も使っていく。こちらにも血の染みが少し残ってしまったが、仕方が無い。 掃除を適当に終えると時計は午前三時を回っていた。 風呂に入りながら私は、今日会社で草むしりをしていた時のことを思い出した。 タンポポの根元を掴んで抜こうとしたら、葉の下にダンゴムシが群れていて、一匹の体を半分潰してしまった事があった。 そういえばその老婆からは始終草むしりをしていた時と同じ臭いがした。 単なる偶然であろうが、私はこういうのを虫の知らせというのかと少し感心すると同時に、背にうすら寒いものを感じた。 ずっと老婆に触れていた私の手はなかなか臭いがとれず、口の中には埃臭いような土臭いような臭気がいつまでも居座った。 私は昔おばあちゃん子で、接客業でも年配の方からの受けはいいほうだと思っている。 お年寄りの方との会話も、楽しい。 何度か介護施設にボランティアに行った事もある。 正直、年配の方は好きだし介護なんかも大丈夫…もしかして向いているのではないか、等と多少なりとも思っていた自分が恥ずかしい。 人間として、凄く心が狭いのかもしれない。 また、自分が身勝手で冷たい人間に分類されるとも思う。 こんな事を書くと、嫌悪の対象でしかなくなるのかもしれないけれど、正直私は「本物はないわ」と心から思った。 自分は潔癖で神経質な性質なのだとつくづく思う。やさしくなる事ができなくても、それを仕方ないとはなから諦めて直す気もさらさら無い。 しかし、腕の傷を思い出してふと思う。 家を出て徘徊する老人の行動、その多くの理由は寂しさや孤独にあるらしい。 仮に彼女がそうだったとしたら、袖に血の滲むような傷を作ってまで人の家にあがりたがる寂しさとは、一体どれほどの物なのだろうか、と。 彼女の行動からは、「生きたい」(もしくはそれに近い感情)というような気迫が強く感じられた。 支離滅裂な行動・会話から、きっと痴呆もきているのだろうと思う。 死に損なったか、と思うのは残酷ながら哀れ故。 生き損じたか、と思うのは卑劣な私の性。 けれど、これからあのような人が幸せに生きていくためには、その人の家族が必要不可欠だと思うのだ。 私ではなく、肉親の配慮と思いやり。 今の私にはこれ以上偉そうなことを言う権限はないけれど、本当にそれだけが頼りだと、そう思う。 ていうかできれば今日来ないでくれ 面食らった(三度目 |
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